「今日は訪問者が多いな…。」
交わしたクエスト内容は数知れず。
一喜一憂して部屋を出入りする冒険者は後を立たず、其れだけで寒気と暖気が舞い上がってくる。
流石に寒さが身に染みる。ロビンは決心して帽子を目深に被り弓を直し、腕組みをするように胸部を覆った。
開いた胸元がいけないと言われれば其れまでなのだが、是は一種のアイデンティティなので如何せん止める訳にはいかない。
白い溜息が漏れ、やっと寒さを目で確認出来るのを知る。
底冷えか、其れとも彼らが怒るのが冷気を伴っているのか。
知るよしも無いが、流石に寒いのは勘弁して欲しいな、と独りごちた。
ならば其処から退けば良い。すれば寒さなど無いだろうに。
しかし思っても退けない理由は存在して、だからこそロビンは此処で静かに時が流れるのを肌で感じ続けた。
そのうちに、意識が闇に呑まれていく。
何時の間にか話しかけるものも居なくなり、彼の意識は暗がりに灯った小さなロウソクの様に、次第にゆらゆらと薄れていった。
ふと気が付けば、既に月ですら朧気に傾いている。
寝ていたのか、と辺りを見れば闇色が特に濃くなっている事に気付いた。
走る者は、居ない。息遣いも聴こえない。
――気配も、感じない。
闇の中で闇に染まったフロアは、静かに月を少し映して、其れ以外を排除してしまったようだ。
感じていた寒さも、今は随分と落ち着いている。
何処か遠くで、狼が謳った。
そして、闇が濃くなる。

「おいおい…今日は随分と満身創痍だな?」
闇に向かって、言う。闇の中でも特に黒く揺らぐ其れは、微笑んでから其の隣に身を置いた。
そして、ゆっくりとロビンに微笑みかけながら、此方も言った。
「貴公に比べればマシだとも…随分と寒そうで、まるで人形のような顔色だ。」
それに曖昧に笑ってから、ロビンはブラッドと共に、少ない会話を交わし始める。
他愛も無い会話。淡々とした口調。同じくゆっくりと言葉を並べて。
夜が更けていく。
再び狼が謳った時、辺りは大分薄くなった闇を纏ってまどろんでいた。
急に、ブラッドがはっと顔を上げた。
其れは少し険しく歪んでいて、ロビンは直ぐにその意味を悟った。
同時に、まだ館内にヒトが残っていた事実に少し驚いた。もう誰も居ないと思っていたのだが。
「ライカン…また私の寝室にヒトを通したな…。」
苦笑しながら、ブラッドはゆっくりと闇の中に融けていこうとする。
ロビンはふ、と其れに微笑んで返し、其の身体が、銀に光る髪の総てまでもが、黒になるのを見届けた。
同時に、周りを囲う闇色が薄れていくのも、目の端に捉えていた。
「また、逢おう…その時まで。」
「嗚呼、その時まで…。」
誓う様に繰り返された言葉は、決して室内で反響はしなかった。
小説:虹霓 雷
絵:タツジ
やってしまった共同制作!
ブラッド伯爵×ラブハンターロビンを!
押して推して圧しておしまくってます!
ちょっと気に掛けてくれるきっかけになればと。
>>タツジ
双方のhp↓
Glass-sic Thunder/虹霓 雷
Limit%/タツジ
あ、関係ないですが絵のカラーver